生保、医療・介護、プロスポーツなど さまざまな分野のヘルスケアを支えるDX

人手不足が加速する一方で、バイタルデータを扱うことからプライバシーへの強い配慮が求められるヘルスケア分野。しかしこの分野は、ITの技術をうまく活用することで、業務の抜本的な改革を進めたり、新たなビジネスモデルを生み出したりできる可能性も秘めています。今回は、最近注目を集めるDX(Digital Transformation)という概念のもと、課題解決に向けて取り組むヘルスケア分野の企業として、生保、医療・介護、プロスポーツチームの3つのユーザー事例をご紹介します。

ケース1:生命保険会社C社

従業員の健康管理を非接触で実現するスマホアプリ

従来の課題

コロナ禍以後、企業は「新しい生活様式」のもとで感染拡大の防止と経済活動の促進の両立を求められるようになりました。社会全体としてはテレワークの導入が大きく進みましたが、一方で人との接触を無くすことが難しい業種も存在します。こうした分野の企業には、従業員の健康管理をいかに非対面(非接触)で行うかという課題がありました。

ソリューションの導入と効果

この種の企業と取引の多い生命保険会社C社は、顧客サービスの一環として、マクニカが提供するAI搭載ビデオベースのバイタル測定SDK「Binah.ai」を組み込んだ、非接触のバイタルサイン測定スマートフォンアプリを提供しています。

Binah.aiは、スマートフォンのカメラで対象となる人物の顔を撮影するだけで、各種のバイタルサイン(血中酸素レベル・心拍数・呼吸数・心拍変動・メンタルストレスレベル等)を測定することができます。測定に要する時間も約2分しかかかりません。また、従来の測定ソリューションの多くが専用のウェアラブル製品が必要だったのに対し、Binah.aiはスマートフォンひとつあればOK。非接触のため感染等の心配がなく、操作もカンタンで誰でもすぐに利用できます。Binah.aiを活用することで、従来の申告ベースとは違った、客観的なデータに基づく健康モニタリングが可能になるのです。

C社ではアプリの利用を促進するため、契約企業にインセンティブを提供。取得した各種バイタルデータをベースに保険料を適正化したり、個々の従業員に対するパーソナルな健康アドバイスを行ったりしています。今後もC社では、従業員の健康管理を通じ、サービスの付加価値を高めていく方針です。

ケース2:社会福祉法人D会

高齢者に24時間365日、安心の見守りを提供
人手不足への対策、サービス品質の向上に貢献

従来の課題

急速に進む我が国の少子高齢化。これに伴い、医療や介護の現場における人手不足は非常に深刻なものとなっており、その対策とサービス品質の向上は今後ますます重要な課題になっていくと思われます。

特に介護施設においては、ケアを必要とする利用者が増加する一方で、スタッフの慢性的な不足が続いています。こうした施設では、人員の限られる夜間の対応に不安を抱えているケースが少なくなく、負担の大きさからスタッフが辞めてしまうという悪循環が続いています。また、それに伴ってケアそのものの品質が低下することも危惧されています。

ソリューションの導入と効果

複数の介護施設を運営する社会福祉法人D会では、こうした問題を解消すべく、マクニカの提供する非接触のモニタリングセンサー「noomi」を導入しました。noomiは、心拍、呼吸、ストレス、睡眠の質、体の動きなどをリアルタイムにモニタリングできるセンサーです。ベッドのマットレスの下へ薄いセンサーを設置するだけで使用することができるため、入居者が就寝するときも違和感がなく余計な負担がかかりません。

測定したデータはWi-Fi経由でクラウドへと受け渡し、異常事態が起きた際にはスタッフにアラートを送信。いち早い対応を可能にします。また、離床してから一定時間ベッドへ戻らない場合も、スタッフへアラートを送信することができます。離床検知機能は6段階で設定でき、利用者の状態に合わせた検知レベルを設定可能です。入居者が完全に離床する前に介助が可能になるなど転倒予防にも役立ち、夜間業務の負担軽減に貢献するとともに、提供するサービスの品質も向上させています。

なお、マクニカスでは、自宅での高齢者を対象とした見守りソリューションも提供しています。このソリューションは室内に小型の4Dイメージセンサーを設置するもので、センサーは24時間動作し利用者の行動パターンを取得。室内での活動についてリモートで見守ることができるようになります。カメラは使用しないため、プライバシーを守りつつリアルタイムで環境をスキャンし活動レベルを記録。転倒検知、呼吸モニタリングによる異常時のアラートなども可能です。在宅介護事業者、警備会社などといったユースケースがあります。

ケース3:プロスポーツチームEサッカークラブ

EMG(筋電)対応パンツを活用し、選手の故障リスクを軽減

従来の課題

プロスポーツチームにとって選手の故障は、試合やチーム成績に悪影響を与える可能性の大きいリスクです。せっかく大金を払って有望な選手を獲得しても、シーズン途中で故障してしまっては投資が無駄になりかねません。それだけに、選手の体力の向上、競技の準備、故障からの回復などに合わせた最適なトレーニングが求められ、故障を予防する上で重要な要素となります。

ソリューション導入と効果

こうした選手の故障に伴うリスク要因をできるだけ少なくするため、プロスポーツチームのEサッカークラブが導入を検討しているのが、マクニカが提供するEMG(Electromyogram=筋電図)センサーを用いたソリューションです。

このソリューションでは、EMGセンサーとポッドモジュールがシームレスに統合されたショーツ/パンツを選手が着用することで、練習や試合などの活動中に、大腿四頭筋、ハムストリングス、および臀筋の活動をリアルタイムで収集。これにポッドモジュールがキャプチャした外部運動データ(走行距離、加速度など)を組み合わせ、運動データの統合分析を実現します。チームトレーナーは、データ分析を通じて各選手の筋肉活動、疲労レベルに合わせた最適なトレーニングを計画することが可能になり、故障リスクを減らすことができます。

従来は、こうしたトレーニングはコーチやトレーナーの個人的な知見やノウハウに基づいて実施されており、いわば職人芸に近いものでした。しかしこのソリューションを活用すれば、属人化を排してデータの蓄積や客観的な判断ができるようになります。たとえコーチやトレーナーが交代したとしても、適切な判断が可能になるのです。

現在マクニカでは、プロスポーツチームを中心に同ソリューションの提供を進めていく方針です。多くの選手のデータを収集し、プレーや練習の分析を行うことで、チーム力を強化する独自ソリューションの開発を目指すとともに、それを一般へとフィードバックしていく計画です。

binah.ai製品資料