デジタルで守る「従業員」や「社会」の健康 ヘルスケアの社会課題解決に向けた先端テクノロジーの活用

超高齢社会を背景に、ヘルスケアに関する社会課題が重要なテーマとなっています。また、コロナ禍の影響によってメンタルヘルスや慢性疾患への対応も必要になっています。事業継続や従業員の健康増進のためには、デジタル活用は必須と言えます。マクニカネットワークスの栫康人が、最先端のテクノロジーやデータを活用してヘルスケアの課題にどのように取り組むべきかをユースケースとともに紹介します。

フィジカル世界の社会課題をデジタルで解決

人口減少、高齢化を背景に、ヘルスケア領域におけるDX活用はどんどん加速しています。フィジカル(リアル)空間における社会課題に対して、デジタルの力で解決しようとしているのです。センサーなどを使ってデータを取得しクラウドに蓄積。蓄積されたデータをAIを使って分析し、それによって得られた結果を社会課題の解決に活用しています。このサイクルをマクニカでは「未来へつなぐ『変革』のサイクル」と呼んでいます。

「労働力不足、高齢化は、『ZaaS (Zangyo as a Service)』つまりサービス残業では決して解決できません。テクノロジーを使って変革のサイクルを回し、フィジカル世界における社会課題を解決するのが最善です」(栫)

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変革のサイクルを繰り返すことで、データだけでなく、ノウハウや知見も蓄積されるため、より効率的に社会課題を解決できるようになります。

センサーの進化でバイタルデータの取得が容易に

では、ヘルスケアに役立てられるセンサーにどのようなものがあるのでしょうか。例えば、スマートフォンのカメラで撮影するだけで、バイタルを取得できるソリューションがあります。人の顔を捕捉し、頬上部の反射や色味から脈の情報を得ることができます。測定できるバイタルとしては心拍数、呼吸数、血中の酸素レベル、心拍変動があり、心拍変動にアルゴリズムを掛け合わせることでストレスレベルを測定することも可能です。将来的なロードマップとしては、推定血圧や表皮温度の測定も可能になる予定です。

脳波を測定するには、従来では脳の血流を捉えるか、脳に電極を差し込んだり大掛かりな磁気センサーの装置を使ったりして電気信号を捉える必要がありました。しかし、現在では頭部にヘッドセットを装着するだけで脳波を測定できる「EEGヘッドセット」があります。これにより、大脳の皮質から発せられる電気信号を周波数として捉えるのが容易になります。取得できるデータは、集中力や疲労度、興味具合、関心度などです。さらに、認識した画像をAIで処理することにより、ベテランの暗黙知を形式化して継承することも可能になっています。

装着しないセンサーとしてはベッドセンサーがあります。心拍数、呼吸数、睡眠の質のほか、寝返りなど身体の動きが測定できます。ベッドから離れた際には通知が届くため、転落検知ソリューションとしても利用できます。

パンツ型筋電センサーを履くだけで手軽に筋電データ(筋肉の周波数)を取得できるソリューションもあります。従来、筋電を測定するには、体毛を剃って電極を貼り付けなければならず、測定場所もシールドルームなど大掛かりな装置の中に限られていました。ですが、パンツ型筋電センサーにより、下半身の左右バランスや筋肉の部位ごとのデータが得られるほか、腹部にモジュールを追加することで、加速度や方向変更、距離、ジャンプといった行動データも同時に取得できるようになります。

さまざまな業種・業界の健康経営やCX向上を支えるテクノロジー

健康経営や顧客体験(CX)向上を支えるソリューションとして、ヘルスケアテクノロジーはさまざまな業種・業界の現場で活躍しています。

例えば、運送業・輸送業ではドライバーの健康状態の管理にテクノロジーが広く活用されています。国土交通省のレポートによると、健康状態に起因して起きた事故の件数は増加傾向にあるとのことです。以前は直接対面によって点呼を行い、ドライバーの健康状態を管理していました。規制緩和によってITを活用した点呼が認められたことをきっかけにIT点呼が普及し、現在ではスマートフォンと連動する携帯型のアルコール検知器を使う企業も増えてきました。なかには、バイタル測定によるストレスや睡眠の状態の管理を導入している企業もあります。

「スマートフォンを使った撮影でいくつものバイタルを取得し、安全対策に活用する未来は近いと考えています。」(栫)

コロナ禍の影響で対面から非対面が主流となり、アフターコロナでも非対面が中心になることが想像されます。生命保険業界でも同様の影響を受けています。コロナ禍の現在では、Web会議システムを使ってリモートで契約内容の相談ができるようになっています。今後、契約時に求められる健康状態が申告ベースではなく、スマートフォンで取得したバイタルを利用できるようになるでしょう。さらには、自身の健康状態を知ることができるアプリを提供し、顧客接点を増やすことで、サービスの向上や新たなCX創出へつなげられるようになります。

介護老人福祉施設においては、介護報酬の改正が行われたことでテクノロジーの活用が加速しました。ベッドセンサーなどの見守り機器を導入したり、インカムを導入したりするなどの条件を満たすと、夜間に配置すべき職員数を減らせるようになったのです。これにより、業務効率化も図れますし、介護報酬の加算もあるので、収益の改善にもつながります。

マクニカでは、ベッドセンサーをパッケージ化し提供しています。パートナーが提供する「 Buddycom (バディコム)」を活用することで、スマートフォンをインカムのように使えるようになります。さらに音声データを文字起こしして共有するというような機能も付いています。

スポーツ分野では、従来はコーチの経験や勘、もしくは選手の申告など、主観的な判断で体調を把握していました。現在はGPSや心拍を測れるセンサーによって、客観的な判断が可能になっています。今後は、AIによるリアルタイム分析を活用することで、どの時点でトレーニングを中止すれば故障リスクを軽減できるのか、重要な試合の日にパフォーマンスを発揮できるようにコンディションを作るかの判断することも可能になるでしょう。

「マクニカでは、半導体やサイバーセキュリティといった世界最先端のソリューションを提供し、さまざまな業種・業界のテクノロジー活用を支援しています。ハードウェアのスペシャリストが多数在籍していますので、取りたいデータに応じてセンサーを作ることもできます。しかしながら、社会課題を解決していくサイクルを回すには、共創していただけるお客様やパートナーが必要であり、しっかり伴走させていただく取り組みにも力を入れています。DXに取り組むことは、大変なことですが、それを『困難』ではなく、『大』きな『変』化への道のりだと捉え、勇気と志を持って取り組んでいけたらと思います」(栫)

デジタルで守る2.jpg最後にヘルスケアの領域でDXを成功させるコツの一つは、「継続的なデータ取得」と言えます。バイタルは、1日の中でも常に変動しており、継続的にデータ取得を行うことで、個々人のベースラインが定まります。ベースラインからの上下の乖離から自分の体調の変化を見極めることができます。また継続的なデータ取得は、自己管理の意識を高め、客観データに基づいた行動変容を促すため、健康経営に一歩近づきます。

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▼人物キャプション
マクニカネットワークス株式会社
DX事業部 DXビジネス部 部長
栫 康人
(2021年7月時点)