日本企業のDX加速を大きく後押しする 世界で使われているナレッジベースとは

コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が喫緊の課題となったのは言うまでもありません。デジタル化が進むビジネスの世界で勝ち抜くには、組織風土や文化の変革、リーダーシップや社員のマインドセットの転換といったビジネスアジリティの獲得が必要です。このビジネスアジリティ獲得に役立つソリューションに「Scaled Agile Framework®(SAFe®)」があります。SAFeに精通するScaled Agile-Japanの古場氏が、世界の名だたる企業が採用するフレームワークを利用したDXの進め方を、日本での事例を交えて紹介します。

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日本のデジタルを取り巻く状況

既存で大きなビジネスを持っている企業も、安心していられない状況になってきています。今や競合はいろんな角度からやってくる時代に差し掛かっているのです。

「日本のデジタルを取り巻く状況は、楽観視できるものではありません。ある調査では、日本のデジタル競争力は24位でした。GDPでは世界3位であるにもかかわらず、デジタル競争力は極めて低いのです。その理由は、人材や新しいものを育てていく土壌の不足、規制面での遅れ、そして何よりも事業変革の機敏性に関する対応が非常に遅いためだと言われています」(古場氏)

経済産業省が2020年12月に公表した「DXレポート2(中間取りまとめ)」でも、企業変革への対応の遅れが日本を弱くしているという課題があり、これまで先送りにしていたものの、コロナ禍ではDXの実現が喫緊の課題となっていることを指摘しています。

「DXを最初に提唱したインディアナ大学のエリック・ストルターマン教授の概念では、DXとは『ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる』ことです。これを具体的に解釈した経済産業省のDX推進ガイドラインを要約すると、『激しいビジネスの環境変化への対応』『新たなデジタルサービスやプロダクト』『業務・組織や企業文化、風土の変革』が必要だとしています。これと同様のことが、ディーン・レフィングウェル氏によるScaled Agile Frameworkにおけるビジネスアジリティの定義でも述べられています。ということは、ビジネスアジリティの獲得がDXにつながると言えるわけです」(古場氏)

ビジネスアジリティの獲得は、北米やヨーロッパではかなり進んでおり、いわゆるキャズムを超えた状態になっています。一方で、アジアパシフィックや日本では、その前の状態です。しかし、悲観することはありません。

古場氏は「先人たちは、失敗とやり直しを繰り返しています。そうした経験を参考に動くことで、より短い時間で効率的に、スムーズに、変革に取り組んでいくことができるのではないでしょうか」と話します。

成熟企業が変革を起こすため「デュアルオペレーションシステム」とは

次に、成熟した企業の変革を行う際の基盤となる「デュアルオペレーションシステム」という考え方を紹介します。

起業した当初、企業はどのようなソリューションやプロダクト、サービスを作って顧客に提供していくのかを、愚直に考えているものです。よりよいものを作り上げていくと、それが世の中に広まっていきます。すると、数十人、数百人という規模に組織が大きくなっていきます。それに伴い、組織の効率化が必要になり、次第に階層型の組織ができていきます。

「階層型の組織ができた段階でも、もともと新しいことを作り上げていったネットワーク型の組織も共存できます。そうして企業はさらに発展していきます。ただ、大きくなり過ぎると、往々にして問題が起こります」(古場氏)

組織が拡大するにつれ、当初は顧客中心に考えていたビジネスが、やがて新しい取り組みよりも売上や会社の安定を重視し、やがて外向きより内向きになっていくことがあります。ただ、階層型の組織も悪いことばかりではありません。

「20世紀に発展を遂げた経営学には、効率的なビジネスの進め方、大規模なビジネスの進め方が詰め込まれています。この確立された効率的な仕組みのうえに、スタートアップで採用されているビジネスの仕組みをのせていき、両輪で経営を回していく動きが必要なのです。これにより安定と効率化に加え、イノベーションとスピードを獲得していくわけです。ただし、1つの会社で実施するものですから、別々ではいけません。『ストラテジー』、『リーダーシップ』、社員の『マインドセット』、そして『カルチャー」を共有しておく必要があります」(古場氏)

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ネットワーク型組織と階層型組織の両輪で進むのが「デュアルオペレーションシステム」です

ネットワーク型の組織と階層型の組織がバランスよく育っていくためには、経営者が「コストの配分」に意識を向けることが必要です。投資の配分を考えるとき、数年後までを考え投資を継続して行っていくべきです。

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ネットワーク型組織への投資は、数年先を見ることが大切

ビジネスアジリティを実現する「Scaled Agile Framework」とは

このデュアルオペレーティングシステムを実装し、ビジネスアジリティを獲得するためには「Scaled Agile Framework(SAFe)」というフレームワークを活用するのが効果的です。SAFeは、膨大な量のナレッジベースであり、無償で閲覧できる形で提供されています。

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全世界で2万を超える組織でSAFeが採用されています

「導入効果のうち、特にお伝えしたいのは、従業員のエンゲージメント向上です。エンゲージメントが向上することで、社員自らが決めたことを実行し、達成感を得て次に進んでいく取り組みを続けられるようになるため、その会社で働くことに誇りを持てるようになります。そのため、優秀な人材が会社に残り続け変革をリードし、ビジネスを大きくしていくことにつながるわけです」(古場氏)

日本では、NTTデータがSAFeを活用して先進的な取り組みを行っています。同社では、35年の歴史を持つキャッシュレス決済サービス「CAFIS」を提供していましたが、マーケットニーズに応える新たなサービスをより迅速に導入できるようにしなければならないという課題感が生まれていました。また、新たな競合への対応、内部の高コスト体質からの脱却、複雑になっていくシステムをマネージして新しいものを生み出す体制作り、新しいテクノロジーへの対応といった課題も出てきていました。

「次世代のCAFISを作る『Digital CAFIS』という取り組みが決定し、SAFeを使ってビジネス変革を行っていきました。数年がかりで取り組んだ結果、従業員のエンゲージメントは20〜30%向上しています。さらにリリース頻度は200%、半分の期間でリリースできるようになりました。つまり、新しいペイメントサービスが登場した場合の対応力が倍増したことを意味します。そして、生産性は20〜30%向上しました。一方で、品質は従来と同じレベルをキープできています」(古場氏)

Digital CAFSが成功に至った理由は3つあります。1つ目は、SAFeそのものを活用したことです。欧米ですでに進んでいるやり方を使うことで、より早く変革を実現できたのです。2つ目は、会社から変革の後押しがあったとのことです。

「テクノロジーのスペシャリストが長期に渡ってチームをサポートする仕掛けが、経営者の判断で用意されたことは、大きな要素の1つです。そして、危機になる前のタイミングでデジタル化の取り組みを始められたこともポイントです。結果として、新しい基盤ができている状態でコロナ禍に入り、高まるキャッシュレスのニーズに対応することができました」(古場氏)

そして3つ目に、SAFeを土台にして、社員の意識改革や人材育成、職場環境のデジタル化、社内ルールの見直しといった、プロセス以外のさまざまな変革を実施したことが、デジタル化組織作りにつながったと言えます。

「変革は大変な道のりです。しかし、グローバルに実証済みの変革の進め方があり、それを適用することで、NTTデータのように国内でもDXを加速することができるのです」(古場氏)

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