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こんにちは、マクニカの井ケ田です。私は普段、データを使って課題を解決するという仕事をしています。

最近、マクニカ社内のとある部門の各種事務タスクにおいて業務負荷の偏り解消における「人員配置を考えるのに時間がかかる」、「配置の妥当性が判断しにくい」という問題を、AIの要素技術の1つである数理最適化を使って自動化ツール開発で解決するという社内DXの活動を始めました。

以下の図のように、人員配置の検討において勘と経験だけに頼っている状況から、数値化された実績と見積もりに基づいて配置案を自動作成するところを目指します。

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plan

今回の記事では華々しい100%の成功とはいえませんが、社内DXを1歩ずつ進めていくなかで想定とは違ったところに価値が生まれたという話を紹介しようと思います。

社内DXに関わる皆さんの参考になればうれしいと思います。

概要

  • マクニカ社内DXで人員配置の自動化ツールを作ってみたら、作っている過程で今期の人員配置素案がツール無しで出来上がってしまいました。
  • ツール自体よりも、配置検討に必要な情報を数値化するスキームが現場に導入されたことの方が重要な成果となりました。
  • 現場の方々が社内DXの価値を体感することで、現実的で効果的なDX推進アイディアが現場から出てくるようになりました。

目次

  1. 従来の社内課題
  2. 今回の社内DXプロジェクトの想定
  3. 現状までの成果(当初の想定と異なる効果)
  4. 今後の進め方
  5. 最後に

シリーズ記事紹介

従来の社内課題

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事務業務における労働時間の偏り

  • マクニカ社内のとある間接部門において、社員の事務業務における労働時間に偏りが発生していました。

しかし、社員の雇用形態や役割の兼務具合によって対象の各種事務業務にかけられる労働時間が異なるため、偏りがどこにどの程度発生しているかは具体的に把握されていませんでした。

勘と経験に基づく配置

  • 各種事務業務への人員配置は、勘と経験に基づいて実行されていました。

受動的な配置変更

  • 人員追加、異動などのリソースの変化が発生する度に、生じた変化の帳尻を合わせる形で小さな配置変更を実施していました。

今回の社内DXプロジェクトの想定

strategy

今回のプロジェクトでは、上述の課題を全て完璧に解決するということを目指していません。

始めに、現場担当の方とディスカッションしながら、時間やお金(コスト)を少しかけることで比較的高い効果が狙えるようなアイディア出し&選出を行いました。

このプロジェクトが実用まで至れば実装した内容を他部署に横展開することで低コストで高い効果を狙うことができると考え、以下の図のようなステップを構想して労働時間の偏り解消に向けたプロジェクトに着手しました。

現状までの成果(当初の想定と異なる効果)

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配置自動化ツールを開発したが、ほとんどの配置を人手で実施した

業務負荷の偏りの小さい人員配置を実現するために今期の配置決めを初期ユースケースとして人員配置自動化ツールの開発を行いましたが、今回は開発したツールの配置自動作成機能の活用には至りませんでした。

勘と経験だけではなく、数字に基づいて配置するという考え方が一番の成果

ツール開発の過程で「数字に基づいて人員を配置するという考え方」が現場に導入され、Excelで各種労働条件を数値化するためのスキームを用意したことが、ツール開発自体よりも現場にとっての重要な変化となりました。

実は、Excelに労働条件を数値化できるように準備をする途中で、ほとんどの今期の人員配置を数字に基づいて作成できてしまったのです(嬉しい?誤算)。

配置自動化ツールを「どっちでもよい」状況への提案に活用

配置が決まっていなかった残りの部分は、人間では配置決定するのに根拠にかけるような「どっちでもよさそう」というようなところに対して自動化ツールに提案してもらうというような使い方をしました。

現場の方々に社内DX活動の価値を体感してもらうことができた

データやシステムに詳しい人たちだけがアイディアを出して手を動かしても、現場の方々にその価値が伝わらないと中々プロジェクトは進みません。

今回の活動では、実際に現場の勘と経験をデータ化し、小さな課題解決をするというアプローチを現場の方が体験する一歩目となったため、これからの社内DXはもっと現場の理解が得られる進めやすいものになるはずと考えています。

プロジェクト開始当初とは違って、現実的で効果的なアイディアが現場の方々から出てくるようになったのも、今回のプロジェクトによる体験による効果だと思っています。

今後の進め方

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業務負荷の偏りを検知し能動的に配置変更させたい

自動化によって配置の考案にかかる時間が短縮され、人員配置の偏りも数値で見積もれるようになりました。
それにより、従業員の人事異動などのイベント必要に迫られる前に業務負荷の偏りを検知して能動的に再配置の検討が出来るようになると考えています。

最後に

人員配置DXこのシリーズは一旦これで終了しますが、またネタが増えてきたときに記事にしてみようと思います。

人員配置DXプロジェクトの数理最適化に関する部分はコチラの第1弾記事、Streamlitを使ったWebアプリのプロトタイピングに関してはコチラの第2弾記事も未読の方は是非読んでいただけると嬉しいです。

    井ケ田 一貴(Kazuki Igeta)