資産・脆弱性対策のジレンマ ~膨大な情報をどう管理するか~

はじめに

サイバー攻撃の手法や対象が日々変化し、ランサムウェアをはじめとする被害が後を絶ちません。企業の規模や業種に関係なく、あらゆる組織が標的となるリスクを抱えています。こうした背景で、資産や脆弱性管理はセキュリティ対策の根幹となりつつあります。しかし、「何をどう管理すべきか」「限られたリソースの中で本当に守るべきは何か」といった疑問やジレンマも多いのが実情です。本記事では、膨大な情報を効率よく管理するための考え方と、現実的な運用ステップについて整理します。

目次

  • 資産・脆弱性管理の重要性
  • 資産・脆弱性管理の課題
  • 効率化に向けた資産・脆弱性管理のステップ
  • 管理体制と運用の優先順位

資産・脆弱性管理の重要性

2025年情報セキュリティ脅威と資産管理の関係性

2025年も情報処理推進機構(IPA)が発表する「10大情報セキュリティ脅威」では、ランサムウェアやシステムの脆弱性を突いた攻撃、サプライチェーンリスクなど、資産管理や脆弱性対応が絡む内容が上位を占めています。これらはいずれも、組織内の資産を適切に把握し、脆弱性を素早く管理・修正できているかどうかに直結しています。

2025年情報セキュリティ (2).jpg

ランサムウェア被害の現状

国内でもランサムウェアの被害は増加傾向にあり、対象となる業種も製造、サービス、通信、医療、金融、建設など幅広くなっています。企業規模に関係なく、セキュリティ上の穴があれば攻撃対象になり得るのが現実です。

国内のランサムウェアによる被害 (2).jpg

脆弱性放置によるリスク

攻撃成功の要因の多くが「パッチ未適用」「管理外端末」「脆弱性が残った機器」など、資産や脆弱性情報の管理不足にあります。公開された脆弱性が攻撃に悪用される事例も増えており、全ての資産を網羅的に把握し、リアルタイムで脆弱性を管理する仕組みが問われます。

資産・脆弱性管理の課題

多様な資産の把握困難

拠点やグループ企業、クラウド利用、BYODや部門独自調達端末など、資産の種類と管理方法は複雑化しています。情報が分散し、Excelや個別管理ツールによる把握では限界を迎えています。

脆弱性情報の収集と処理負荷

脆弱性情報の量は年々増加し、CVSSスコア「High」以上が全体の6割を超える状況です。全ての脆弱性への対応は膨大な工数を生み、優先順位付けや迅速な処理が難しくなっています。

脆弱性の増加推移.jpg

CVSSスコアだけでは対応できない課題

CVSSスコアを基準とした運用は理論値に過ぎず、現実の攻撃リスクとは乖離しています。米CISAの指令により、「実際に攻撃者が悪用した脆弱性(KEVカタログ)」を重視する手法へ移行が始まっています。PoC(攻撃コード)やITW(現実での攻撃事例)の有無を確認し、優先的に対策すべき脆弱性を見極めることが求められています。

効率化に向けた資産・脆弱性管理のステップ

必須事項1:IT資産の網羅的な把握

まずすべての資産(端末、サーバ、ネットワーク機器など)を漏れなく把握し、管理できている状態を作る必要があります。管理外資産の存在は、パッチやセキュリティ製品の展開にも大きな穴となります。UEM(統合端末管理)、MDMRMMなどのツールを使うことで、分散資産の一元管理を実現できます。

必須事項2:脆弱性情報のリアルタイム収集

次に脆弱性スキャナーや専用サービスの活用で、OS・ソフトウェアごとの脆弱性情報をリアルタイムで収集します。情報収集が遅れると、攻撃のリスクや対応遅れが発生します。自動化されたツール導入が不可欠です。

推奨事項:統合管理基盤による効率運用

網羅的な資産管理と脆弱性収集が整えば、統合管理基盤(CAASMなど)で優先度付けや対策実施までを一元化できます。これにより運用漏れやリスクの可視化、チーム間調整が圧倒的に効率化されます。

管理体制と運用の優先順位

非管理端末のリスク

管理台帳が未整備な状態でセキュリティ製品(EDRなど)を展開しても、非管理端末が残れば対応漏れ・リスクが残存します。資産管理を最初に整えることで、後続のセキュリティ対策が効果的になります。

管理台帳整備のメリット

資産情報が統合管理されていれば、パッチ配布やEDR展開が効率化され、リスクが現実的に減少します。「守るべきものが見える」ことで、運用も最適化されます。

最後に

資産・脆弱性管理は、もはや人力では限界があります。全資産の網羅的把握、脆弱性情報のリアルタイム収集、そして統合基盤による運用効率化を組み合わせることで、攻撃被害を根本から減らすことが可能です。まずは自社の現状把握と、ツール導入による効率化からご検討ください。

UEMMDM、脆弱性スキャナー、CAASM基盤など、現場に役立つソリューションや導入支援にも対応していますので、資産管理・脆弱性管理のご相談は、マクニカまでお気軽にお問い合わせください。

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