侵害拡大に"待った"をかける!真の即応力を引き出す「ラピッドフォレンジック」入門

はじめに

近年、企業ネットワークへのサイバー攻撃は増加傾向にあり、特にランサムウェアによる被害が顕著です。事業のグローバル化と共に、セキュリティ対策が手薄な海外拠点や関連会社を狙った攻撃も多発しています。インシデント対応では「すばやさ」が重要ですが、従来の調査方法では影響範囲の特定や復旧が遅れ、深刻な損失につながるケースも少なくありません。

本記事では、これらの課題を解決する新手法「ラピッドフォレンジック」について、その必要性と具体的な進め方を解説します。

目次

  • 昨今のインシデント発生状況
  • 広範囲調査が求められる背景と従来手法の限界
  • 実際の支援事例と具体的な効果
  • ラピッドフォレンジックの活用ポイントと注意点

昨今のインシデント発生状況

日本企業を襲うランサムウェアの脅威

企業や組織のインシデント発生数は年々増加しており、マクニカの独自調査によれば、直近54ヶ月で511件ものセキュリティインシデントが日系企業で発生しています。被害は公開情報に限られるため、実際の数字はさらに多いと考えられます。とりわけ、ランサムウェア被害の件数は警察庁の統計でもここ数年高止まりしており、企業規模や業種を問わず深刻な脅威となっています。

相次ぐ日経企業・組織.jpg

標的は海外拠点・関連会社へ拡大

最近の攻撃は、本社の厳重なセキュリティを迂回し、ガバナンスが緩い海外拠点や関連会社の外部資産(VPNなど)を足掛かりにしています。これら拠点を踏み台に情報窃取や侵害拡大を行い、社内の情報共有を悪用して本社へも侵入しようとするケースが増加しています。

昨今の被害傾向.jpg

事業継続に深刻な影響

広範囲に被害が拡大すると、侵入経路や影響範囲の特定に想定以上の時間がかかります。警察庁の統計では、復旧までの期間が長引くほど費用損害や機会損失が増加することが明らかにされています。事業継続の観点でも、早急な調査・復旧が不可欠です。

深刻化する事業継続への影響.jpg

出典:警察庁 令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について 
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R6/R06_cyber_jousei.pdf

広範囲調査が求められる背景と従来手法の限界

なぜ広範囲の調査が必要なのか

現代の攻撃は単一端末やサーバーへの侵入に留まらず、企業グループ全体に影響が及ぶことが珍しくありません。特に海外拠点・関連会社の残存脅威を素早く把握しなければ、本社や他拠点への侵害も進む恐れがあります。こうした状況では、端末やサーバーごとに細密に調べるのではなく、関連する広範囲の環境を一挙に調査し、早急に白黒判定することが肝要です。

従来の「ファストフォレンジック」手法の課題

従来は、ファストフォレンジックという手法で数台単位の端末に専門ツールを展開し、膨大なデータをダンプ・解析する方式が主流でした。しかし、広範囲な攻撃ではこのアプローチでは調査端末数に限界があり、全体像や攻撃グループの特定、TTP(攻撃手法=手口)の抽出に多大な時間がかかります。

実際、グローバル製造業の事例でも、影響範囲の特定に数週間要し、その間に被害が拡大するリスクがありました。膨大なデータから脅威特定をするには専門家の判断が不可欠ですが、「速さ」が求められる局面では現実的な方法とは言えません。

新たな解決策「ラピッドフォレンジック」とは

ラピッドフォレンジックの概要

ラピッドフォレンジックは、「ファスト」よりもさらに高速かつ広範囲の端末を一気にスキャンできる、新しいフォレンジック手法です。1日で数百台規模の調査が可能となり、スキャンと同時に脅威有無を迅速に判定できます。

ラピッドフォレンジックを構成するのは、主に下記2つの要素です。

  1. 適切なツールの活用
  2. 専門家による調査及びアドバイス

ツールは、軽量設計かつ脅威インテリジェンス(既知のマルウェアや攻撃手法の知識)と連携し、情報収集と脅威特定を即時に実現。加えて、セキュリティエキスパートが調査結果を解釈し、数営業日内に的確なアドバイスや対策案を報告します。

従来手法との違いとメリット

ファストフォレンジックは全端末情報を一度にダンプするため網羅性は高いものの、膨大な情報の解析や人力での脅威特定に多くの時間が必要です。一方、ラピッドフォレンジックは「必要な情報だけを即時収集」し、「脅威インテリジェンスと自動照合」することで、攻撃有無・進入経路・影響範囲も即座に特定できます。

さらに、EXEファイルを実行するだけの簡易展開で、既存環境への負荷もごく小さく済みます。人手による全件調査を省略できるため、広範囲・迅速な対応が可能となります。

実際の支援事例と具体的な効果

事例:グローバル製造業のインシデント対応

マクニカがサポートしたグローバル製造業では、海外拠点の端末数百台規模でラピッドフォレンジックツールを展開。スキャンデータは脅威インテリジェンスと即時照合され、攻撃グループ(APT10/ A41APTSigLoaderなど)の特定に成功しました。これにより、進入経路や影響範囲が迅速に可視化され、適切な対策案を現場に速やかに提案できます。

従来手法では数週間を要した影響範囲特定も、ラピッドフォレンジックでは1日で全体スキャンし、数営業日中に調査報告まで完了しています。

セキュリティエキスパートが担う役割

ツールだけでなく、専門家による調査・助言もラピッドフォレンジックの強みです。例えば、攻撃グループの特徴やSSL-VPN装置の脆弱性、サーバーへの不正接続の疑いが検出された場合、各拠点への追加スキャンやパッチ適用の具体的な推奨を迅速に提示します。こうした知見が加わることで、拠点ごとに個別最適な防御策を進めることができます。

ラピッドフォレンジックの活用ポイントと注意点

住み分けの重要性

ラピッドフォレンジックは広範囲のインシデント調査・初動対応に最適ですが、特定範囲の深掘り調査では従来のファストフォレンジックが有用です。状況に応じて使い分け、最速・最適な対応を選ぶことがセキュリティ実務の鍵となります。

万一のインシデント時どうすればいいか

もし自社の海外拠点や関連会社に広範囲調査が必要なインシデントが発生した場合、ラピッドフォレンジックサービスの有無を確認し、速やかな相談・導入検討をおすすめします。サービスを提供していない場合は、マクニカまでお気軽にお問い合わせください。

最後に

サイバー攻撃の影響が拡大するなか、迅速な広範囲調査と専門家支援が企業の事業継続を守る重要な鍵です。ラピッドフォレンジックは、従来の限界を打破し"真の即応力"を引き出す切り札となります。インシデント対応で不安や課題を感じたら、ぜひ最新の手法・支援を試してみてください。

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侵害拡大に

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