認証基盤の次はIDガバナンス?~IDセキュリティの現在地とこれから~
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はじめに
クラウドサービスや働き方改革の進展に伴い、企業のID管理は大きく変化しています。従来の認証基盤だけでは対応しきれない新たな課題が浮上し、多様なIDのガバナンスが重要視される時代となりました。本記事では、ゼロトラスト時代のIDセキュリティの「今」と「これから」を俯瞰し、IDアクセス管理の全体像と、近年注目度の高いIGA(Identity Governance & Administration)の意義・進化について整理します。ベンダー選定や最新ソリューション、運用課題の解決手法まで、体系的に解説します。
目次
- ゼロトラスト時代のIDセキュリティの重要性
- IDが果たす役割と変化
- 複雑化するID管理の課題
- IDアクセス管理の全体像とIGAの意義
- 主要ソリューションの分類
- IGAの基本機能と構想
- IAMのみでは対応しきれない運用リスク
- IGA導入による課題解決
- ベンダー選定・機能比較のポイント
- 主要ベンダーと導入パターン
- これからのIDセキュリティ----注目トレンド
- AI権限分析・ISPMの登場
ゼロトラスト時代のIDセキュリティの重要性
IDが果たす役割と変化
ゼロトラスト・ネットワーク・アーキテクチャでは、すべての通信・資産・エンドユーザーを前提なく検証します。その中でもID(アイデンティティ)は最上流で位置づけられており、ネットワークやデバイス、データの保護と並び、重要資産の防御の要となっています。
以前は、従業員IDや限られた特権IDのみを社内で管理する形でしたが、現在ではクラウドID・マシンID(非人間ID)・社外協業IDなど多様なIDの種類・数が増加しています。用途も社内外・クラウド・各種SaaSへ広がり、人的流動化による入退社・異動の頻度も増し、管理はますます複雑になっています。
複雑化するID管理の課題
IDの増加によって直面する課題は立場ごとに異なります。
セキュリティ担当者視点
外部に露出するIDが増え、不正アクセスやID侵害のリスクが高まっています。フィッシング、認証情報の搾取、パスワード漏洩、MFA迂回などIDを標的とした攻撃が年々増加しており、「誰がどのIDを持ち、どのような状態か」を常に可視化し、認証・承認のプロセスを強化する必要があります。
運用管理者視点
システム数や人事イベント増大に伴い、ID改廃運用が煩雑化しています。従来の手作業型運用では効率化が難しく、ミスや漏れによるリスクも発生しがちです。ID運用の自動化・効率化は急務です。
利用者視点
多くのシステムへのログイン作業が煩雑となり、パスワード管理負担も増加。シングルサインオンやパスワードレス認証の導入による利便性向上が求められています。
IDアクセス管理の全体像とIGAの意義
主要ソリューションの分類
IDアクセス管理領域には、主に以下の3つのソリューションがあります。
- IAM(Identity & Access Management):認証・シングルサインオン・多要素認証等
- IGA(Identity Governance & Administration):IDガバナンス、権限管理、棚卸、リスク分析等
- PAM(Privileged Access Management):特権ID・アカウント管理
近年はIAMやPAMの導入が進む一方で、IDライフサイクル全般と権限最適化を担うIGAのニーズが急拡大しています。
IGAの基本機能と構想
IGAのキーワードは「最小権限の原則」です。
誰が何にどんな権限を持つべきかを厳格にルール化し、各種情報を集約管理して、リスクの是正や監査対応、職務分掌の徹底を実現します。
基本構成では、人事システムからID情報を取り込み、アカウント/権限の自動プロビジョニングを各システム(クラウド/オンプレ)へ連携します。申請・承認ワークフローも内蔵されており、利用者による申請→管理者の承認→自動アカウント作成をシームレスに実行。管理者は棚卸や監査、分析レポートの出力など運用全般で活用できます。
IAMのみでは対応しきれない運用リスク
IAM(認証基盤)導入のみでは、以下の課題が残ります。
- 人事情報からアカウント作成・権限付与が手作業で運用負荷
- 複数人事システムが存在し運用複雑化
- 台帳管理できず不要アカウントが残存
- システム利用申請承認後のアカウント作成が手動でタイムラグ
- ID管理システムの老朽化や新システム対応遅延
IGA導入による課題解決
IGA導入でこれらの課題の多くが解消されます。
人事システムの柔軟な連携と自動アカウント作成・権限付与が可能になり、操作ミスの防止や運用効率化を実現。システム利用申請~承認~アカウント作成までが統合自動化され、権限情報の一元管理・台帳管理による棚卸、リスク把握、監査も容易となります。
To-Beモデルでは、複数人事システムから自動で情報を取り込み、アカウント/権限のプロビジョニングを一括管理。申請即時利用開始が可能となり、情報の一元化によるリスク削減も達成できます。
ベンダー選定・機能比較のポイント
主要ベンダーと導入パターン
マクニカではOkta(IAM主力)、Saviynt(IGA主力)、CyberArk(PAM主力)を取り扱っています。各ベンダーは自社得意領域で機能拡張を進めており、最近は特にIGA機能の強化が顕著です。
機能レベルは「Suite(高機能)」と「Light(標準)」で分かれ、クラウド連携主体か、オンプレ・レガシーシステム対応まで必要か、自社要件と照らし合わせて最適な組み合わせを見極めることが重要です。
- フル機能組み合わせ
- IAM/IGA/PAM主体構成
- クラウド or オンプレ偏重型
Suite IGAは複雑なライフサイクル管理、複数人事情報取込み、高度な権限粒度管理、リスクベース棚卸、監査機能(SAP職務分掌対応等)まで網羅します。Light IGAは標準的なクラウド連携や主要権限管理が中心です。
これからのIDセキュリティ----注目トレンド
AI権限分析・ISPMの登場
AIによる権限分析・推奨機能や、ISPM(Identity Security Posture Management)のようなプラットフォーム型管理が台頭。従来の人が使うIDだけでなく、APIキーやシークレットなどのNon Human IDの態勢管理にも広がっています。
AIを用いれば、ユーザ属性ごとに最適な権限状態を提案・サジェストでき、申請者・承認者・棚卸実施者が合理的な判断材料を得られます。ISPMは対話型AIも導入し、リスク状況をレポーティング可能です。
最後に
クラウド時代のID管理は「認証」だけでなく「ガバナンス」「運用効率化」「新しい脅威対策」までを網羅する必要があります。各種ソリューションやベンダーの違い、組み合わせパターンを理解し、自社環境に最適なIDセキュリティ体制の構築へ踏み出してください。
マクニカでは、IDアセスメントサービスにより自社現状の可視化と課題抽出、最適な導入プランの検討を支援しています。IDに限らず、ネットワーク、クラウド、EDR、SIEM等も含めた全方位的なセキュリティ提案や最新ソリューション情報も随時案内しています。
企業が直面するセキュリティ課題も多岐に渡るため、ID・認証基盤単体だけでなく、資産・ネットワーク・暗号化・脅威検知まで俯瞰した体制整備が重要です。
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