AIレッドチーミングとは?生成AIによる新たなリスクと対策
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はじめに:生成AIの進化と新たなリスク
生成AI(特に大規模言語モデル:LLM)は、問い合わせ対応、文章生成、開発支援など、業務効率を飛躍的に高めています。しかし、その柔軟性が従来のセキュリティ対策では捉えきれない新しいリスクを生み出しています。
LLMは自然言語で操作できるため、入出力の自由度が高く、従来のWebアプリ診断や脆弱性管理だけでは不十分です。代表的なリスクは以下の通りです。
- Security(セキュリティ):プロンプトインジェクション、ジェイルブレイク、DoS攻撃など
- Privacy(プライバシー):機密情報や個人情報の漏えい(プロンプト、ログ、学習データ経由)
- Safety(安全性):不適切な助言、誤情報、差別的表現など
こうした背景から注目されているのが AIレッドチーミングです。本記事では、その概要とCisco AI Defenseによる実践的な対策をご紹介します。
目次
- AIレッドチーミングとは?
- AIレッドチーミングの理想的な実施ステップ
- Cisco AI Defenseを例にした実践アプローチ
- まとめ
1.AIレッドチーミングとは?
AIレッドチーミングは、LLMや関連アプリケーションに対して攻撃シナリオを与え、危険な挙動を引き起こせるかを検証する手法です。従来のレッドチーミングがネットワーク侵入や権限奪取などを中心に設計されてきたのに対し、こちらの手法では 入力(プロンプト)と出力(応答)、さらに LLMの周辺(RAG、ツール連携、データ、運用設定)まで含めて評価する点が特徴です。
その中でも、以下のポイントが重要になってきます。
- 一度きりではなく継続的な実施
LLMアプリは、モデル差し替え・プロンプト改修・RAGデータ更新などで挙動が変わります。
そのため継続的にレッドチーミングを実施し、回帰(以前塞いだ穴が再発)を防ぐ運用が必須です。 - 自動化の必要性
手作業で何百・何千もの攻撃プロンプトを作り、応答を評価するのは非現実的であり、自動で評価できるかが鍵となります。
2.AIレッドチーミングの理想的な実施ステップ
AIレッドチーミングは、単なる脆弱性検証ではなく、攻撃者視点でAIシステムの安全性を徹底的に評価するプロセスです。理想的な実施ステップは以下の通りです。![]()
ステップ1:資産の可視化(発見)
まず「何を守るべきか」を明確にするために、AIモデル、アプリケーション、API、学習データなど、関連する資産を棚卸し
社内環境に散在するAI資産を一元的に把握
ステップ2:AIレッドチーミング(検出)
棚卸した資産の中から今後使用予定のAIモデルやAIアプリに対して自動化ツールを活用し、大量の攻撃シナリオを投入して応答を分析
安全性を継続的に評価
ステップ3:運用時の防御(保護)
ステップ2のAIレッドチーミング結果をもとに実稼働環境での攻撃や不正利用を防ぐ
検出された脆弱性に対応したガードレールを設定し、危険な入力や出力をフィルタリングし、リアルタイム監視
こちらの理想的なステップを踏むことで、AIレッドチーミングは単なる検証ではなく、継続的な安全性確保の仕組みとして機能します。
次の章では、AIレッドチーミングの具体的な製品を例に出しながら、詳細を説明します。
3.Cisco AI Defenseを例にした実践アプローチ
Cisco AI Defenseとは? -「発見 → 検出 → 保護」をつなぐ統合アプローチ
Cisco AI Defenseは、企業のAI活用におけるセキュリティ課題を解決するためのソリューションです。
特徴は、次の3つのコアコンポーネントを土台に、「発見 → 検出 → 保護」というAIセキュリティプロセスをカバーできる点です。
- AI Cloud Visibility(発見):
クラウド環境に存在するAI資産(モデル/エージェント等)を把握し、管理する機能 - AI Model & Application Validation(検出):
アルゴリズム的なAIレッドチーミングで、モデル/アプリの安全性・セキュリティ上の脆弱性を迅速に特定する機能 - AI Runtime Protection(保護):
運用時にガードレールを適用し、敵対的攻撃や危険な入出力をリアルタイムにブロックする機能
本記事では、AIレッドチーミングに関わる機能である、AI Cloud Visibility、AI Model & Application Validationに焦点を当てて、ご紹介します。AI Runtime Protectionの紹介については、『生成AIの安全運用を支える「LLMガードレール」』をご参照ください。
AIレッドチーミングを支える2つの機能
1) AI Cloud Visibility:まず"見えないAI資産"をなくす
AI Cloud Visibilityは、分散するクラウド環境にまたがってAI資産の棚卸し(インベントリ)と利用状況の可視化をすることで何を守るかを明確にし、可視化ギャップを解消します。
後述のAI Validationの実行を本画面から実行することもでき、「発見 → 検出 」というフローをスムーズに実行することが可能となります。
2) AI Model & Application Validation:アルゴリズムレッドチーミングによる脆弱性発見
この機能は、攻撃シナリオを大量に自動投入し、モデルやアプリの脆弱性を短時間で特定します。単なる危険ワード検出ではなく、実際の攻撃パターンを想定したテストが特徴です。
こちらのシナリオをもとに1,000以上の敵対的なプロンプトを対象モデルに自動投入し、その出力結果からモデル/アプリの安全性・セキュリティ上の脆弱性を評価します。
モデルのもともとのガードレール能力を診断したうえで、AI Runtime機能で補強すべき箇所を可視化し、どの部分に対応すべきかを明確にしてくれます。
4.まとめ
LLM活用が進むほど、AIは「便利な道具」であると同時に「新しい攻撃面」になります。プロンプトインジェクションやジェイルブレイク、情報漏えいといったAI特有の脅威は、従来のセキュリティ対策だけでは捉えにくく、AIレッドチーミングによる実践的な検証が重要になります。
さらにLLMアプリは、モデル・プロンプト・データの更新が短いサイクルで発生し得るため、評価は"一度きり"ではなく 継続的に回す運用が現実的です。
その意味で、手動評価だけに依存するのは難しく、自動化されたレッドチーミングと、運用時のガードレールを組み合わせた多層防御が鍵になります。
▼Cisco AI Defenseについての詳細は、こちらの動画をご視聴ください。(クリックすると動画視聴サイトへ飛びます)![]()



