フロンティアAIで高度化するサイバー攻撃~クラウドセキュリティ戦略の再定義~
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はじめに
攻撃者がAIを使い始めた、というのはもう遠い未来の話ではありません。
脆弱性の発見からマルウェアの作成、侵入後の横移動まで、攻撃のさまざまな工程がAIによって自動化され、スピードを増しています。
その一方で、守る側の人員は相変わらず限られており、日々増えていく脆弱性やアラートに従来のやり方では追いつけず、加えて経営層への説明も求められる。
そんな板挟みに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、AIを悪用した攻撃の脅威動向と、従来運用の限界を押さえたうえで、防御側は何ができるのかを具体的に考えていきます。
目次
- フロンティアAIによって変わる脅威
- 増え続ける脆弱性と従来運用の限界
- AIにAIで勝つ!防御の鍵は自社環境の「コンテキスト」
フロンティアAIによって変わる脅威
2026年4月、Anthropic社は「Project Glasswing」と題した取り組みのなかで、自社のAIを使って主要なOSやブラウザから多数のゼロデイ脆弱性を発見したと公表しました。
このモデルは「Claude Mythos」と名付けられており、あまりに高性能であるため一般公開は見送られ、限定パートナー約40社にのみ提供されていました。
Claude Mythos の力を借りることで、Mozilla Firefoxでは脆弱性対応件数が、2025年の月平均 約21件から、2026年4月は約20倍の423件と急増しました。しかも、そのうち271件は、Mythosが発見したものだと報告されています。*¹
ただし、これは一部の特別なモデルに限った話ではありません。
汎用的なモデルでも、人間なら12時間かかるような脆弱性発見を、わずか10分ほど・低コストでこなせる水準に近づいています。
「脆弱性を見つける」という作業は、いまやAI業界全体に共通する一般的な能力になりつつあります。
そして攻撃の高速化は、CrowdStrike社が公開した「2026年版 グローバル脅威レポート」でも数字にはっきり表れています。*²
- AIを活用した攻撃者活動 前年比89%増
- ブレイクアウトタイム 29分(最速27秒)
- AIプラットフォームへの攻撃 90以上の組織
とはいえ、冷静に見ておくべき点もあります。
現時点のAIは、侵入から情報の窃取までを完全に自律でやり遂げる段階には、まだ達していません。
脆弱性の発見はあくまで侵害成立の「必要条件の一つ」であり、実際に攻撃を成立させるには、適切な指示や条件の整備(ハーネスエンジニアリング)が欠かせません。
過度に身構える必要はありませんが、攻撃の「速さ」と「量」が桁違いに増しているという現実には、きちんと備えておく必要があります。
※Mythosに関してより詳しい情報を知りたい方は、Macnica SD-Stream(登録無料)よりご視聴いただけます。
https://sd-stream.macnica.co.jp/home/session/?id=2606Mythos
増え続ける脆弱性と従来運用の限界
では、守る側の状況はどうなっているでしょうか。
米国国立脆弱性データベース(NVD)への登録件数は、2019年の17,305件から2025年には48,185件へと急増しました。
あまりの数に、NISTは全件を分析する従来の方針を見直し、優先度の高いものに絞り込まざるを得なくなっています。
もはや「すべての脆弱性に対応する」こと自体が、現実的ではなくなってきているのです。*³
この問題は、クラウド環境ではいっそう深刻になります。
CSPMやCWPPといった単一のソリューションを導入するだけではアラートが大量に発生するため、本当に危険なものがその中に埋もれてしまいます。
脆弱性や設定ミス、権限、公開状態といった情報も、それぞれ別々に管理されていて全体像が見えにくくなります。
その結果、調査や原因の特定に時間がかかり、修正にたどり着くまでのリードタイムも延びていきます。
こうした状況では、アラートを一つずつ手作業で追いかける運用は、増え続ける脅威に対してどうしても後手に回ります。
いま必要なのは、膨大な情報の中から「本当に重要なリスク」だけを浮かび上がらせ、影響度や緊急度に応じて優先度をつけて対処するリスクベースのアプローチです。
AIにAIで勝つ!防御の鍵は自社環境の「コンテキスト」
AIを駆使する攻撃に対して、防御側に勝ち目はあるのか。
結論から言えば、十分にあります。
その鍵を握るのが、攻撃側には決して手に入らない防御側のみが持つ「コンテキスト」です。
コンテキストとは、どのコードがどのクラウド資産上で動き、どんな権限を持ち、外部にどこまで公開されているのかなど、環境の関係性を表す情報です。
この全体像を把握できるのは、外から探りを入れる攻撃者ではなく、環境を運用している守る側だけです。
コード(Code)・クラウド(Cloud)・ランタイム(Runtime)を横断して資産同士の関係性を可視化できれば、バラバラだったアラートを「意味のあるリスク」として読み解けるようになります。
ここで効いてくるのが、「有害な組み合わせ(Toxic combination)」という考え方です。
例えば「インターネットに公開されている」「重大な脆弱性がある」「過剰な権限を持っている」という条件が重なって初めて本当に危険な攻撃になります。
対処すべきリスクを有害な組み合わせに絞り込むだけで、対象は一気に現実的な数まで減らすことができます。
また、防御側はこれらのコンテキストを学習したAIを用いることで、非常に有利な対策ができます。
攻撃側のAIは、インターネット上に公開されているリソースやデータのみを頼りに攻撃を仕掛けるのに対して、防御側のAIは、自社環境を誰よりも深く理解して攻撃経路となり得る弱点を迅速に特定し、高速かつ効率的な防御を実現できます。
またリスクの修正時も通常ユーザーが調べるべきこと(誰に連絡するか、優先度の判断基準、関連するリソースなど)を自動的に調査して、環境を加味した修正手順やその他のワークアラウンドを自動的に出力できます。
ここで具体的に従来のアラート対応と何が違うのか比較してみます。
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従来のアラート対応運用 |
コンテキスト×AIによるリスクベースのアプローチ |
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大量のアラートを人手で一つずつ確認 |
コンテキストを用いて「有害な組み合わせ」の可視化、 |
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調査と原因特定に時間がかかる |
根拠・結論・確信度をAIが提示し、対応の高速化 |
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修正手順の調査などリードタイムが長い |
AIが自動的で環境を加味した修正手順の提示 |
この「自社環境を理解したコンテキスト×AI」こそが、AIに対抗するための土台になります。
こうした「コンテキスト × AI」の発想を、実際の製品に落とし込んだ一つが、クラウドセキュリティプラットフォームの「Wiz」です。
Wizは、検出した資産に対して攻撃・防御・修復の役割を担う「Red Agent」「Green Agent」「Blue Agent」の3つのAIエージェントがコンテキストを付与します。
- Red Agent:発見した自社の資産に対して、外部の攻撃者視点で攻撃を行うことで、ペンテスターの役割を行い、リスクの検知精度を向上
- Green Agent:リスクを分析して資産のオーナーを推測し、環境を加味したリスクの修正手順を提示
- Blue Agent:発生した脅威を自動でトリアージし、結論だけでなく確信度とその根拠まで添えて提示することで、Tier1のアナリストの様な役割を行い担当者の調査負荷を軽減
まとめ
攻撃がAIによって高速化していく時代に、いつまでも人手だけで対応し続けるのは、限界があります。
自社環境のコンテキストを学習したAIエージェントを、リスクの検知から修正のプロセスに組み込むことで、対処を自動化・高速化していくことが、フロンティアAIという脅威への現実的な答えだと考えています。
出典
*¹2026/5/7 Behind the Scenes Hardening Firefox with Claude Mythos Preview:https://hacks.mozilla.org/2026/05/behind-the-scenes-hardening-firefox/
*²2026/2/24 CrowdStrike社2026年版グローバル脅威レポート:AIによって加速する攻撃者と新たに形成される攻撃対象領域:https://www.crowdstrike.com/ja-jp/press-releases/2026-crowdstrike-global-threat-report/
*³2026/4/15 NIST Updates NVD Operations to Address Record CVE Growth:https://www.nist.gov/news-events/news/2026/04/nist-updates-nvd-operations-address-record-cve-growth
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